ETC車載器の後付け方法

バイク用ETC導入のメリット

ツーリングの快適性を劇的に向上させる装備として、もはや必須とも言えるのがETC車載器です。
四輪車以上にその恩恵は大きく、料金所でグローブを外し、財布を取り出し、小銭を探すという一連の煩わしい動作から解放されることは、単なる時間短縮以上の精神的な余裕をもたらします。

さらに、休日割引や深夜割引といった高速道路料金の割引制度が適用されるため、頻繁に高速道路を利用するライダーであれば、初期費用を数年で回収することも十分に可能です。
導入にあたっては、まず自身のスタイルに合った機種を選ぶことから始めましょう。

ETCの選び方

バイク用ETC車載器には、大きく分けて「アンテナ一体型」と「アンテナ分離型(別体型)」の2種類が存在します。
それぞれの特徴を理解し、愛車の形状や積載スペースに合わせて選ぶことが重要です。

「アンテナ一体型」は、ETCカードを挿入する本体部分にアンテナが内蔵されているタイプです。
主にハンドル周りに専用ステーを使って設置します。

メリットは配線が電源ケーブルのみとシンプルで、取り付け工賃や本体価格が比較的安価に抑えられる点です。

しかし、ハンドル周りに大きな機器が鎮座するため、バイクのデザインを損なうことや、離れる際にカードの抜き忘れによる盗難リスクに注意が必要です。
カウルがなく、シート下にスペースがないアメリカンやクラシックタイプのバイクでは、こちらが選ばれることが多い傾向にあります。

一方、「アンテナ分離型」は、カードを挿入する本体と、通信用の小型アンテナが分かれているタイプです。
本体はシート下やカウル内部などの見えない場所に収納し、アンテナとインジケーターだけをハンドル周りやメーター付近に設置します。

見た目がスマートで、カードの盗難リスクも低いのが最大のメリットです。
ただし、配線の取り回しが複雑になるため、取り付け難易度が高く、工賃や本体価格も一体型に比べて高額になる傾向があります。

近年のスポーツバイクやツアラーでは、この分離型が主流となっています。

ETC2.0の将来性と選択基準

機種選定でもう一つ迷うのが、「ETC1.0」か「ETC2.0」かという点です。
ETC2.0は従来の料金収受機能に加え、渋滞情報や安全運転支援情報などを双方向通信で受け取れる次世代規格です。

現状、バイクにおいて2.0のメリットを最大限享受できるシーンは限られていますが、「圏央道の料金が約2割引になる」といった具体的な優遇措置が存在します。
また、一部の道の駅に一時退出しても追加料金がかからない「賢い料金」という社会実験も2.0搭載車限定で行われています。

本体価格は2.0の方が高価ですが、将来的なサービスの拡充や、長く乗り続けることを考慮すれば、今から導入するならETC2.0を選んでおくのが賢明な選択といえるでしょう。

自分で取り付ける際の手順と重要ポイント

バイク用ETCの取り付けはショップに依頼するのが確実ですが、工賃を節約したい場合や、配線の取り回しにこだわりたい場合は、自分で取り付ける(DIY)ことも可能です。
ただし、絶対に守らなければならないルールと、バイク特有の注意点があります。

セットアップ(登録)のルール

ETC車載器を利用するには、ナンバープレートなどの車両情報を機器に書き込む「セットアップ」という作業が必須です。
この作業は、厳しい審査を通過した登録店でしか行えないため、個人で行うことは法律的にも技術的にも不可能です。
そのため、DIYで取り付ける場合は以下の手順を踏む必要があります。

セットアップ対応のネットショップで購入する

車検証や軽自動車届出済証のコピーを送り、店側でセットアップを完了させてもらいます。

セットアップ済みの商品を受け取る

登録が完了し、すぐに使える状態の車載器が届きます。

自分でバイクに取り付ける

※実店舗(バイク用品店など)では、取り付け作業を依頼しない場合、販売やセットアップだけを行うことを断られるケースが多いため注意しましょう。

電源の確保と配線処理

ETC車載器を動作させるには、バイクの電力が必要です。
基本的にはACC電源とアースの2本、または常時電源を加えた3本の配線を接続します。

ACC電源とは、キーをONにした時に電気が流れる線のことです。
ヒューズボックスから専用の取り出し配線を使って確保するか、テールランプやホーンなどの配線から分岐させる方法が一般的です。

最近のバイクでは、純正でアクセサリー電源を取り出すためのオプションカプラーが用意されていることも多いため、サービスマニュアルで確認してみると良いでしょう。

最も注意すべきは配線の処理です。
ハンドルを左右に切った際にケーブルが突っ張ったり、挟まったりしないよう、余裕を持たせつつタイラップで確実に固定します。

また、エンジンの熱を持つ部分や、可動部に触れないように取り回すセンスが問われます。
接続部分にはギボシ端子や防水カプラーを使用し、水濡れによるショートや接触不良を防ぐ対策も不可欠です。

アンテナの設置角度と固定

分離型の場合、アンテナの設置場所と角度が極めて重要です。
ETCゲートとの通信は電波で行われるため、アンテナが適切な角度で空を向いていないと、ゲートが開かないという重大な事故につながります。

メーカーの取扱説明書には、水平に対して何度、進行方向に対して何度といった厳密な指定があります。
カウルの内側に隠す場合でも、アンテナの上に金属パーツやステッカーなどの遮蔽物がないことを確認しなければなりません。

取り付けには強力な両面テープを使用しますが、脱脂を十分に行い、走行中の振動で剥がれ落ちないよう強固に固定してください。
インジケーターは、走行中に緑色の点灯(正常動作)が視界に入る位置に設置することで、ゲート進入前の安心感につながります。