クラッチワイヤーの調整方法

「遊び」の正体と不適切な場合の弊害

バイクのクラッチレバーを握り込んだ際、実際にワイヤーが引っ張られて重さを感じるまでには、数センチほどのスカスカとした区間があります。
これを「遊び(フリープレイ)」と呼びます。

単なる隙間のように思えるかもしれませんが、この遊びの量が適切かどうかが、バイクの操作性とエンジンの寿命を左右する重要な要素となります。

基本的にクラッチワイヤーは金属製であるため、長期間使用していると徐々に伸びてきます。
また、クラッチ板の摩耗によっても遊びの量は変化します。そのため、定期的な確認と調整が欠かせないのです。

遊びが多すぎる(ワイヤーが緩い)場合

遊びが過剰にある状態では、レバーをグリップに当たるまで完全に握り込んでも、クラッチが完全に切れていない「クラッチの切れ不良」が発生します。

この状態になると、信号待ちでギアをニュートラルに入れようとしても入らない、シフトチェンジのたびに「ガチャン」と大きな衝撃がある、といった症状が現れます。

無理に乗り続けると、トランスミッション(変速機)のギアを痛める原因となるほか、停車中も常にバイクが前に進もうとする力が働くため、非常に危険です。

遊びが少なすぎる(ワイヤーが張りすぎ)場合

逆に遊びが全くない状態は、常にレバーを半ばまで握っている半クラッチの状態と同じになります。
これを放置すると、エンジンの動力がタイヤに100%伝わらず、加速が鈍くなる「クラッチ滑り」を引き起こします。

さらに深刻なのは、常に摩擦熱が発生することでクラッチ板が焼き付き、走行不能に陥ることです。
こうなるとクラッチ板の全交換が必要となり、高額な修理費用がかかってしまいます。

一般的に、レバーの先端で10mm〜15mm程度の遊びがある状態が適正とされています。

アジャスターを使った具体的な調整方法

遊びの量が適正範囲から外れていると感じたら、調整を行いましょう。
基本的には手元の「レバー側」で行い、調整幅が足りない場合に「エンジン側」を触るという2段階の手順で進めます。

ステップ1:レバー側での簡易調整

まずはハンドル左側のクラッチレバーの付け根にあるアジャスターを確認します。
ゴムカバーをめくると、平らな円盤状のロックナットと、細長いボルト状のアジャスターが見えます。

手順としては、最初に大きなロックナットを緩めます。
次にアジャスターを回して調整を行いますが、ここでの回転方向が重要です。

遊びを少なくしたい場合は、アジャスターを反時計回り(外側)に回します。
ネジが緩んで飛び出してくることで、ワイヤーのアウターが押されて実質的にワイヤーが引っ張られ、遊びが減ります。

逆に遊びを多くしたいときは、アジャスターを時計回り(内側)にねじ込みましょう。
10〜15mmほどの遊びができたら、アジャスターが動かないように押さえながら、ロックナットを確実に締め込んで固定してください。

ステップ2:エンジン側での本格調整

レバー側のアジャスターを限界まで回しても遊びが適正にならない、あるいはアジャスターが抜けきってしまう場合は、エンジン側の調整機構を使います。

ワイヤーを辿っていくと、エンジンの右側クラッチカバー付近に、ダブルナットで固定されたステー部分があります。
まずはレバー側のアジャスターを完全にねじ込んだ状態(遊びが最大の初期状態)に戻します。

そのうえで、エンジン側のロックナットをスパナで緩め、アジャストナットを回して大まかな遊びを作ります。

エンジン側で8〜9割程度の調整を行い、最後にレバー側で微調整を行うのがプロのやり方です。
最後にハンドルを左右いっぱいに切り、ワイヤーが突っ張って「遊び」がなくならないかを確認して完了です。